アイスクリーム

おいしさの秘密

空気の量が味わいを変える

アイスクリームは、フローズンデザートの代表的なもので、その特徴は冷たさとおいしさを楽しむ食品であり、凍っていながらなめらかな組織を持っていることです。その秘密は空気。攪拌しながら凍らせることで空気が取り込まれ、なめらかな口あたりになるのです。この空気の混入量をオーバーランと言います。1リットルのアイスクリームミックスに、1リットルの空気を混ぜると2リットルのアイスクリームができ、オーバーランは100%です。普通のハードアイスクリームでオーバーラン 60%~100%、ソフトクリームでは30~80%くらい、シャーベット系では20~60%と低くなります。つまり、オーバーランが低いとねっとりした重みのある味となり、高いとフワッと軽い味になります。ミックスの配合によって、適当なオーバーランを選ぶのも、おいしいアイスクリームを作るコツです。


アイスクリームの口あたりを左右するのは組織

アイスクリームミックスをフリーザー(凍結攪拌機)にかけると、氷結部の氷の結晶は細かく砕かれます。一方で、未氷結部は凍結温度が低下し、脂肪・たん白質・糖質・ミネラル・安定剤・乳化剤などの相乗作用で粘度が高まり、攪拌によって各層の間に空気が送り込まれます。その結果、氷や脂肪球、気泡などが細かく均一に分散した柔らかな氷=アイスクリームができるのです。口に入れるとサッと溶けるアイスクリーム特有の口あたりはこの組織から生まれます。また、アイスクリームは氷に比べて氷結部分が少ないうえに、脂肪の粒子や空気の泡が熱を伝えにくくし、熱の吸収を妨げるため、同じ温度でも氷よりアイスクリームのほうが、冷たさを感じずソフトでまろやかな口あたりになるのです。


アイスクリームの組織を拡大してみると

氷結晶
氷結晶20~70ミクロン
未凍結部
気泡30~150ミクロン
たん白質0.01~0.1ミクロン
脂肪球0.04~3.0ミクロン



風味の決め手は乳脂肪

アイスクリームのおいしさは、サッと溶ける口溶けの良さとなめらかさ、そしてコクのある風味です。この独特のうま味は、良い組織とボディによって生まれます。ボディはほどよく配合され、適度な粘性を持ったアイスクリームミックスによって作られます。アイスクリームの原料のうち、製品の風味にいちばん影響を与えるのが牛乳、乳製品です。中でも良い組織とボディのポイントになるのが乳脂肪で、アイスクリームにクリームフレーバーと豊かな風味を与え、同時になめらかな組織と粘りと硬さを持った、しっかりとしたボディ、そして、良好な保形性を与えます。乳脂肪の含有量が適度に高いほど、コクのあるまろやかな風味ときめ細かな組織になります。コクのあるアイスクリームを購入する際には、乳脂肪の含有量を目安に選んでください。


アイスクリームを家庭で保存するポイント

家庭用の冷凍庫は-18℃以下に冷却できるようになっていますが、次のことに注意して保管してください。
1) 冷却効果を高めるため、空気の循環を妨げない程度に品物を入れ、庫内の温度を-18℃以下に保つこと。
2)家庭用の冷蔵庫は解放部分が大きいので、冷気が逃げ出しやすく、外気が侵入しやすいので、扉の開閉を素早く、開閉回数を少なくすること。
3)一度溶けたアイスクリームが再度凍結すると針状結晶を生じ、組織が粗くザクザクしたものになるので、残ったものは溶けないうちに素早く庫内に入れること。一度溶けたものを再凍結させると、風味が落ちます。
4)庫内の温度が低いため製品の表面が乾燥しやすいので、アイスクリームが残ったら表面を平らにして入れること。デコボコがあると乾燥する面積が広くなり、製品の劣化を早めます。
5)開封後はなるべく早く食べきること。フタと中身の間に空間ができると、その部分が、乾燥して表面が劣化します。
6)乾燥防止のために、ラップやポリ袋に包んで貯蔵すること。
7)アイスクリームは匂いがつきやすいので、匂いの強いものと一緒にしないこと。ラップなどで包むのも良い方法です。